社会への提言 社会システムの進化と変革を後押し、プロセスにコミットメント


 近代化の歴史で、幾多の経済危機や社会的変革を乗り越えた経験を持つわが国は、多少のアップダウンを繰り返しつつも、経済大国から生活大国へのソフトランディングを実現すると期待できます。
 その過程における前向きの提言を披露します。
 


◎ピンチの中にチャンスあり? 
 社会システムを支える行政システムの効率化、産業活動の国際化に向けて、事業内容・組織体制の再構築、規範の明確化とガバナンス、社会への貢献、規制緩和と情報開示、ソフト化経済と市場グローバル化への柔軟な対応が迫られています。緩やかな産業構造転換に向けての基盤固めとビジョン作りのチャンスです。

◎エントロピーを減らして社会はスマートに
 産業活動や社会の進展は「資源」を「エネルギー」または「製品」に変え、これらは消費された後、エントロピー(エネルギーの質の指標、大きい方が低劣とされています)の大きい「熱」あるいは「ゴミ」になります。このプロセスを放置する限り「社会エントロピー」は増加します。次世代に豊かな自然環境を残し、適度な繁栄を可能とするためには、社会エントロピーの増大を防ぐ積極的な資源リユース・リサイクルシステムを確立する必要があります。

◎グローバルマインドとローカルアイ
 「豊かさと成熟のバランス」「エネルギーとマテリアルの安定供給」「地球環境の保全」「南北問題や経済格差の解決」などのジレンマを解消するためには、地域的偏りがある資源及びエネルギーの有効活用とその的確なリデュースを実現する「コンプレックス・マネジメント」を提案します。



◎教育・研究環境整備は未来への鍵
 社会・産業システムと平行して、わが国が充実すべきものが教育・研究環境です。横軸に生涯教育施設の充実、縦軸に人文・社会・自然各分野の科学技術が展開するオープン高等研究機関の整備を配したマトリクスプランが望まれます。

◎人間回帰の社会デザイン
 成熟化社会を迎える過程で効率一辺倒の価値観は大きく変動し「人間尊重の視点からのものづくり」が見直されています。人間の豊かな感性・健康的な生活・快適な環境を中心に据えた産業技術は、生活空間や作業環境の適合性、製品の使い勝手の面で大きな進展を生み、息の長い省資源・省エネ・省スペースを実現した産業製品から社会インフラに至るユニバーサルデザインが普及すると期待できます。
 
◎ジェンダレス・エイジレス社会と多様化への移行 
 高齢化、少子化が社会の活性化を阻む要因と云われています。社会の多様化とソフト化は、ある意味では「中性化」や「成熟化」の側面を持ち、雇用市場の要請からも女性や高齢者の社会進出を促進する環境を整備する必要があります。
 特に、ワーキングウーマン市場は閉息感さえも漂う経済的「踊り場」を打破するトリガーと成り得ます。女性は「流行」を作り上げる中心的存在でもあり、この市場は家庭や生活、文化や教育産業を始め波及効果が大きく、ジェンダレス・エイジレス社会を支援するルール改正や生活基盤整備が新たな「ソフト公共事業」分野となると考えられます。

◎リスクへの構えと行動計画
 自然災害や自然現象は勿論、社会動向や経済環境の動きについては、その多様性とカオスがある限りズバリ的確な予測はできません。また、ある特定の条件下において適合し過ぎた社会システムは、徒に社会保険コストがかさみ、冗長度が小さく変化に即応できないと考えられます。であれば、社会に要求されるのはアクシデント対応の柔軟なコマンド&オペレーションシステムの整備ではないでしょうか。
 例えば、リアルタイムな情報ネットワークと経験や知見を蓄積したインテリジェンス・ベース(人工知能)を具備することで、行政ヘッドや企業司令塔をスリム化し、アクシデントやトラブルに応じて目的指向に活動できる運用システムが機能します。云わば「基本は徹底的に、しかし構い過ぎないこと」をバックボーンとしたリスク・ダメージ対応システムです。将来ともに起こりうる社会的リスクに備えて、フレキシブルでタフな構成で最小限の目標と必要な機能を有し、指向性が明確な意志決定システムが要求されます。

◎個人と社会の相関関係と相乗効果
 仮想空間ビジネスやメタバース、高度デジタル社会での人間の選択肢は多様化しています。個人と社会が直接的に双方向にリンクしリアルタイムに世界情勢や社会活動がモニタされています。20世紀に勃興した民主主義や自由経済を監視することが21世紀の責務であり、歴史のアーカイブとチャートの修正が必要と考えられます。

◎国際交流と国際分業に向けて
 平和を理念とし「文治国家」を実現したわが国では、21世紀では「賢人国家」を目指した改革が望まれます。国際貢献は、その具体的な選択枝として大いに有望であり、国際交流と相互理解は、確かな「安全保障」と大きな「市場創出」につながると考えられます。
 特に、一早く先進国入りしたわが国では、地理的或いは感性的にも近いアジア・太平洋地域における環境保全、安全保障、産業育成支援等に経済面及び科学技術面での期待が寄せられています。さらに、国際交流と国際分業が活発化する将来には「安心、信頼、魅力」溢れる投資先や観光国としてアピールすることが可能です。また、現在の「ソフト・情報・文化の入超」状態も大きく是正されると期待できます。

◎カオスの踊り場でのソフト戦略 
 行政機能の地方展開、産業拠点の広域拡大によって一極集中から多極分散型の社会構造へ移行する中、地域生活基盤が整備されれば地方主体の活性化が進むと考えられます。また、環境問題と資源問題の要請から省エネや省資源を念頭に置いた経済施策、産業活動が一般化します。
 一方では、大幅な規制緩和と企業倫理確立が進展し、「成長の踊り場」を模索する間、サービス業に代表される非製造業が国内生産額の過半を占め、ソフト化及びサービス化社会が到来することで、ニューマーケットを生み出す可能性も大きいと予想できます。

 社会情報システムでは、あらゆる未来志向の問題にシステマティックに対応いたします。